あじさい

ちなみに、僕はほとんど料理をしないんだけど。

#1 あい 13
「うん、何とか切り分ける事が出来たようね」
深く息をつき、安堵の表情を浮かべる店長。
切り分けられた肉は、あらかじめ沸かせておいた鍋に入れる。
しばらく経って、肉は湯から取り出され、店長特製のタレを浸けて圧力鍋へと放り込む。
味がしみこんだところで、オーブンレンジへとその肉を入れる。
「これで良し、と。あとは焦げ目が付けば裏返せば良いかしら」
店長ってとても手際が良いな、と改めて感心した。
私なんてまだ20歳そこそこだし、人生経験豊富な店長と比べるなんておこがましいのだろうけど。
「あら、梓さん。私の顔に何か付いているかしら?」
「い、いえっ。何でもないです」
いつの間にか、店長の顔を見つめていたらしい。
私の方はというと、キャベツの千切りが終わり、ようやくスパゲティがゆで上がるくらいのモノだ。
(ううん……。やっぱり店長って凄いわ)
もっとも、私がもう少し要領良くならなきゃいけないのだろうけれど。
そう考えている内に、肉を焼いた時に出る香ばしい匂いが漂ってきた。

僕も手際の良い人間に成りたいとですよ。