第7回SRC学園シナリオコンペ

さてさて、SRC学園シナリオコンペも7回目を迎えました。
今回は「合格」というテーマ。
時節的にもマッチするお題ですが、一体どのようなシナリオが来たんでしょうか。
色々書いていたら、いつも以上に長くなってしまいました。


『Change_My_Resume!!』 マイヤーさん
ぱっとしない準騎士御手洗大樹くんと、音野美咲さんとのボーイミーツガール物語。
大樹の冴えなさっぷりが素晴らしい。
そのくせ、自分と同じ境遇の者に対しては高圧的になるというか。
そしてまた、自分も誰かに喝采される事のみを願っていて、その場面しか思い浮かばないとか。
うーん、この辺りの描写の仕方は巧ですのう。
騎士団内のいじめとか、いやに生々しい……っ!
真犯人を見つけるに至るまでの種明かしは、「こ、こんな所に伏線張っていたのか!」と驚愕させられました。
さりげなく張ってるんだもん、判るもんか!!
しかし、丁寧かつ爽快感満載な演出は健在で、クライマックスはこれでもかと盛り上げてくれました。
一番のミソである大樹の成長は、彼の弱点をさらけ出して、それを彼自身が見つめて落胆し、
そこから這い上がっていく様を上手く描けていたなーって思うわけで。


『聖乙女へいこう!』 回天さん
鴉目みことさんが聖乙女学園へ転校したいという物語。
その為には、出てくるモンスターを3回倒すと。それが出来れば合格よ、と。
しかし、窮地に陥ると邪気眼――ならぬ、焦土眼が発動し、強力な攻撃が出来るように。
これはこれで熱い。
そして、駆けつけた2人の聖乙女学園の2人と共にモンスターどもを薙ぎ倒して。
さて合格かと思いきや。
そのオチは……、やっぱりか!!


『双姫剣舞』 philoさん
伊佐美千佳の行動を監視する、神楽千歳の物語。
千歳のモノローグで進んでいく感じですかな。
でも、この素朴かつ重厚な文章は見習うべき点があるなぁ。
あと、会話のテンポがとっても僕好み。
「敵を欺くには、まず味方から」。
この言葉通りなのか、千佳が行った行動は独断とも言えるのでしょうが、
それは後ろに控えている彼女達を信頼しているが故の行動……。
逆に、千歳の未熟さが露呈されたというか。
でも、その未熟さを自覚しているが故に、高みに向かって頑張ろうとしている様は素晴らしいというか。
その2人の姿を見て、トップたる霧さんは、彼女達の可能性に賭けたんでしょうのう。
ひとつ気になった所が。
プロローグの場面で、フェイドアウトしたままクリックするまでずっと黒画面でした。
これはWaitでも良かったんじゃないかなぁ。


『刹木さんがんばる』 千早神牙さん
秀一くんにチョコを作ってあげようというお話。合格は関係あるのでしょうか。
って、えええーっ!? プレイヤーが操作して作るんかっ!!
何とか頑張って1つは作れた……。
んで、良いムードになってチョコを渡そうと思った矢先!
恋者の昇格試験の為に、チョコ争奪戦が始まる!
……あれ? もしかして、合格って、恋者昇格試験の事!?
どうでも良いけど、刹木さんのツンデレっぷりには惚れちゃいますよね。


『桜散る季節に人を妬むということ』 俳諧さん
大学教授になろうとして、SRC学園へと左遷(?)された四季河原さんのお話。
能力者を思いっきり嫌悪している彼女。
それが故に、SRC島への異動は、とても腸が煮えくり返る気分だったに違いない。
少女を探して、チーマーを倒し、モンスターを倒したら。
何かチートキャラ出たぁ!
それとも、能力者でなければ敵わないという一種の演出なんだろうか。
でも、彼女にとってあの出来事は、
能力者はとても強い存在であるというコンプレックスを植えつけるに余りある事柄だったに違いありません。


『最果ての楽園にて』 パンさん
人類が滅んだ世界って!
圧倒的な世界観から始まる、アンドロイド・サクヤさんのお話。
アンドロイドである彼女が、人間の心――なかんずく「正しい人間」に合格する事が出来るのか。
過去と現在を行き来してお話が進む感じですのう。
……って、チテイ人! 生きていたのかっ。
彼らには彼らなりの文化やコミュニティがあって、それを論理的に解釈する彼女はアンドロイドっぽいというか。
徐々に活動停止の時間が迫っていく中、喜びがあったり、別れがあったり、悔恨があったり。
最終的には主人の言いつけを破り、禁断の部屋へと入り、主人の本当の理由を知り。
そして。
仲良くなったチテイ人達と、100年ぶりに咲いた桜と、最期の別れを。
あの、手を上げる「さようなら」のボディ・ランゲージ。
ツリメくんの時と同じように、チテイ人達に囲まれて、最期を迎える――。
そのシチュエーションだけでも感動的なのに、ミクさんの歌と一枚絵は、ホント破壊力あり過ぎる。
思わず涙が出てしまいましたさ! あぁ、畜生っ!!
彼女一人だけの世界で、人間の気持ちを手に入れた彼女に、最大の拍手を。
余談ですが、サクヤの絵の隣に、ツリメくんも一緒に描いていたら、涙がちょちょ切れていたかもしれない。


『総合格闘武術能力大会』 狼二世さん
まさかの総「合格」闘。
しかし、蓋を開けてみると、騎士団に合格したいという、名も無き一生徒の物語。
ちなみに、主人公の文字数制限はないようで。
「フェネホーフ・オフ・ヘッセリンク」(これで一つの苗字らしい)って入れたら、通っちゃった。
そんな訳で、総合格闘武術能力大会に出る訳ですが。
相手を倒すと、そのメンバーを吸収出来るのかー。
うん、僕はボム子と広耳堂を選びましたさ!
そんなこんなで、3回戦(?)にて終了。
各自、それぞれの道に進む事が出来ましたとさー。
主人公の最後のセリフが印象的でした。
「そう、誰かに不合格にされたって、自分自身を否定する事はないんだ」
そして2回目プレイは、因縁深き騎士団と戦う事に。
こちらは、何回も不合格にされても、何度も立ち向かう主人公の姿勢に、とても爽やかな感触を覚えました。


『5分で出来る地雷除去』 ないんさん
まさかまさかの隠れシナリオ。
す、すげぇ! マインスイーパーだ!!
つい3日前、暇つぶしにやってたマインスイーパーだとっ!?
地雷除去できれば合格という、何とも投げやりな物語。
何とか121秒にてクリア。
これって、最初開けた所で決まっちゃうので、運の要素も絡んでくるんですよねぇ。
つか、SRCマインスイーパーまで作れちゃうなんてっ!!




っとまぁ、今回も中々に優れたシナリオが多かったと思います。
「試験に合格」というシナリオが少なかったのは意外でした。
あまりにも直球過ぎて、敬遠してしまった感じでしょうか。
テーマに合ってるシナリオは、回天さんでしょうか。狼二世さんのも捨て難いですが。
合格に向かって何かを行う、シンプルな物語だったからこそ、伝わりやすかったですね。
オチはアレだけどさっ!
完成度はパンさんがダントツかな。あの絵は反則だっ!
個人的に好きなシナリオは、philoさん。言い回しがとても好みだし、あの展開もよい感じでした。
最優秀主演男優賞は、マイヤーさんの大樹。
自身の至らなさに目を背けず、這い上がっていく様は、とても清々しい印象を受けました。
最優秀主演女優賞は、俳諧さんの四季河原。
マイナスベクトルに向いている情念って、何だかそそられる。
最優秀助演男優賞は、千早神牙さんの秀一。
彼女をもっといい女性に仕立て上げる為、先手を打つ様、カッコよすぎる。
最優秀助演女優賞は、狼二世さんのおゝとも理。もえも良いんだけど、彼女で。
あのお節介を焼いたからこそ、他の2人に居場所を与える事が出来たようなものです。
最優秀モブキャラ賞は、パンさんのチテイ人・ツリメくんとナキメくん。
この2人がいたからこそ、彼女は人間の心を見つける事が出来たんだと思います。
「さようなら」の挨拶は可愛いなー。
最優秀イロモノシナリオ賞は、ないんさんで。
SRCには、まだまだ可能性が秘められているんですね!


今回、僕自身も参加をさせていただきましたが、
とにかくは、約1ヶ月間頑張って作って下さった皆様方に、最大の感謝を。
そして、管理者のマイヤーさんも大変にお疲れ様でした。
投稿者のテストプレイもさる事ながら、自身のシナリオも作らなきゃいけないので、
かなりの労力を用いたと思います。ご苦労様でした!


期間を設けて作るという事は、
締め切りに向かって何とか仕上げるという、良い意味でのプレッシャーを感じながら作るという事。
確かに、出来なかった時の辛さもありましょうが、
やりきった時の清々しさを、今回は肌で感じる事が出来ました。
前回(第3回)の時は、案外時間があってあの出来でしたし。
今回も、時間がありながらあの出来ですし。
自身の限界値も足りない所も、ある程度見極める事が出来ました。


この学園シナリオコンペ、次回以降も行われると思います。
どうか、多くの方がこのコンペに参加して頂きたいと思います。
学園シナリオも、なかなか良いシナリオが多く出て来ていますし、
自分なりの調理法で、好きなキャラクターを料理する事も可能です。
そして何より、自分の力を十二分に発揮して、
今の力の具合を確かめる事の出来る、またとない機会だと思います。
……まぁ、そんな堅苦しいことはさておいて。
とにかく、僕自身は作っていて(後から思えば)楽しかったので、
コンペというお祭りに参加したい方は、寄ってらっしゃい!